神戸市長選の争点(4) 憲法集会への後援を拒否―憲法擁護の放棄
安倍〝自民党政治〟の持ち込み許すのか、「自治体らしい自治体」を取り戻すのか
(4)憲法集会への後援を拒否―憲法擁護の放棄
市政のゆがみの三つ目は、「憲法擁護の放棄」です。
安倍首相は、五月三日の憲法記念日に憲法九条の改憲を公言しました。六月二十四日、神戸市内の講演会では自民党改憲案を次の臨時国会で提出すると発言しました。安倍内閣の民主主義破壊、憲法改悪の策動がつよまるなか、久元市長はそれに迎合・追随する姿勢をとっています。
神戸市がこれまで行ってきた憲法集会の後援を「(憲法擁護の集会を後援することは)中立性をそこなう」として拒否しています。久元市長は「公務員は憲法改正する必要性を論じることもでき、運動もできる。憲法を公務員が守らなければいけないとの考えしか持つことができないのは表現の自由を損なう」など議会で答弁。公務員の個人としての考えと、公人としての神戸市長としての政治姿勢をすりかえた論議まで展開し、安倍首相の進める憲法改正の動きを擁護しています。
戦争法や共謀罪など安倍政権が推進する「戦争できる国づくり」は「国会において、その最終的な判断のもとに成立を見たものであり、法律の廃止・撤回を国に求めることは考えていない」と発言。また安倍内閣の集団的自衛権容認にあわせ、久元市長が自ら作成してブログに発表した「神戸市職員採用試験問題試作品」では、「アベノミクス論争を深めたい」とする読売新聞の社説を題材に、「憲法第九条のもとで許容される自衛の措置の内容を正しく説明しているものはどれか」という、集団的自衛権を認めるか否かを踏絵にしたような設問をつくって、職員や人事委員会に押し付けようとしています。
久元市政になってから「学校で神武天皇以来の神話を教えるべき」(二〇一四年二月二十六日 代表質疑 自民党・坊やすなが議員)、「区役所に日の丸を掲揚せよ」(二〇一四年三月二十八日 自民党・守屋隆司議員)など、過去の侵略戦争を「正義の戦争」と美化する日本会議に関わる議員たちによる危険な動きもつよまっています。
ほかにも、原発再稼働や消費税増税は政府の姿勢に従って容認の立場。原発再稼働反対が市民・国民の多数となっていても久元市長は「住民投票や国民投票で全て事柄が決められるべきではない。英国のEUからの離脱なんかもそうだ。ましては原発の問題というのは、専門家の判断が尊重されるべき」(二〇一六年六月)と発言しました。
およそ「地方自治」「団体自治」の立場を放棄しているような久元市長の姿勢の根底には、憲法をくらし・政治にいかす立場を放棄していることがあります。
「神戸市政の三つのゆがみ(大型開発の復活・住民福祉の後退・憲法擁護の放棄)」を正すには、安倍〝自民党政治〟の持ち込みを許さない、地方自治の立場に立った住民本位の市政への転換が求められます。
驚愕! 「平和首長会議の動き知らない」と久元市長が答弁
9月5日に開かれた本会議では、久元市長の驚くべき答弁が飛び出しました。
7月7日国連において核兵器禁止条約が採択され、核兵器が違法化され、核の傘に依存する核抑止力論も明確に否定されました。 日本共産党の林まさひと議員が、久元市長に対し、広島や長崎市長のように、政府に批准を求めていくべきだとしました。久元市長は「条約批准は国の専管事項。国が判断される」と答弁しました。
林議員は、8月10日に平和首長会議で確認されたアピールや行動計画を知っているかとの質疑に、久元市長は「存じ上げない」との答弁。かさねて林議員は「平和首長会議に神戸市が加盟しているが、8月10の会議に、部局から担当者が派遣されているのは知っているか」との問いにも、久元市長は「存じ上げない」との驚くべき答弁が返ってきました。 核兵器禁止条約について、市長に質疑することは、議会のルール上、5日も前に通告しています。非核神戸方式を持つ神戸市の長として、久元市長の平和行政に対するまったく不誠実な態度が浮き彫りになりました。
代表質疑では、林議員は、安倍首相の「日本国憲法9条1項2項を残しつつ明文で自衛隊を書き込む」とした改憲発言について久元市長の賛否を問いました。久元市長は「地方自治体の長が、見解を表明する必要はない」と、憲法問題に対しても、安倍政権に物を言えない姿勢が明らかになりました。 久元市長は、中央官僚出身として、安倍首相から直接推薦状をもらい、4年前の選挙では菅官房長官など自民党の大々的な応援を受けました。林議員は「安倍内閣との強いパイプを強調しているが、核兵器でも憲法でも政府に物が言えない。中央の言い分だけが送られてくる、一方的なパイプだ」と厳しく批判しました。