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2017/06/11 更新

神戸港将来構想」:目を疑う超巨大開発

目を疑う超巨大開発

神戸市は五月十九日、神戸港開港百五十年の記念式典で突如「神戸港将来構想」を発表しました。二〇五〇年(概ね三十年後)を目標年次とする同「構想」は、目を疑うような二つの「超大型開発」――「国際ロジスティック構想」と「ウオーターフロント構想」――が据えられた神戸港「構想」です。その問題点を考えます。

①一兆円こえる超巨大港湾づくり

 
 

一つ目の「超大型開発」は、新たな人口島埋め立てを柱にした「国際ロジスティック構想」です。
六甲アイランドの南沖に三百三十三ヘクタールもの人口島を埋め立て、巨大なコンテナターミナルを整備します。まだできてもいない大阪湾岸道路から、コンテナ専用橋上道路を二本建設し、六甲アイランド南と、ポートアイランド二期につなぐ計画です。
埋め立て事業は、神戸空港をしのぎ、ポートアイランド二期(三百九十ヘクタール/五千二百億円)に匹敵する五千億円規模。現在進められている総事業費五千億円の大阪湾岸道路に、二つの橋上支線道路と埋め立て事業が加わると、一兆円を大きく超える計画です。
いま、日本の大手船会社三社では事業統合計画がすすんでおり、神戸港で利用される十一の国際コンテナターミナルの維持どころか減少すら想定されています。「構想」では神戸港のコンテナターミナルをほぼ倍加する計画ですが、当然費用対効果はまったく検討されておらず、過大な投資といわざるをえません。

前市長の公約を破棄し、六甲アイランド南を建設

六甲アイランド南は、阪神・淡路大震災前からある埋め立て計画です。二〇一一年に矢田前市長が、市長選出馬時に「大規模投資は抑制し、市民生活に身近な投資を優先する」と公約。そこで掲げられたのが「六甲アイランド南凍結」です。
その後の市政運営で「大規模投資の抑制」は必ずしもそうなっていませんが、「六甲アイランド南凍結」は、いまも神戸市の大方針です。「構想」は、そうした経過が市議会でも確認されていることを無視し、方針の大転換を勝手にきめています。
久元市長は、自らが四年前に掲げた「子どもの医療費無料化」について「一部負担が必要」と公約を放棄しました。このたび、前矢田市長の「大規模投資は抑制」の公約まで放棄し、「超大型開発」優先の神戸市政の復活を推し進めようとしています。

②スクラップアンドビルドに偏ったウオーターフロント構想

神戸港将来構想の二つ目の「超大型開発」は、巨大な民間再開発を柱にした「ウオーターフロント構想」です。
「構想」では、須磨海岸から深江浜までひろがる再開発ですが、戦略的な取り組みとされているのは「中央区」一極集中の再開発です。
神戸には「強力な集客資源が不足している」ときめつけ、「都市の成長の牽引」する商業施設や集客施設の誘致に依存しています。いまの神戸の良さや魅力を無視したスクラップアンドビルドに偏った再開発です。
三宮の再開発計画では、先日、駅前にミント神戸をしのぐツインタワー商業ビル構想を発表した二社がアドバイザーに認定されました。また、市役所二号館再整備では、商業・にぎわい施設の誘致が検討されています。さらに、神戸港の「構想」ではポートターミナルや神港突堤西地区に商業集設を誘致する民間再開発をすすめ「国際集客エリア」にする計画で、既存の商店街を顧みずに、三宮商圏の巨大再編計画を推進しています。
また「構想」では、居住人口の減少と世界レベルの「居住者獲得競争」に備え、「外国人居住者の取り組みが重要」としています。そのため神港突堤西地区の建築制限を規制緩和して地上三十階建て百メートル級の高質マンション誘致や、須磨水族館を民間に売り払い須磨海岸を外国人向けの滞在型リゾートにしようとしています。一体誰のための神戸市なのでしょうか?
住民や商店業者などに期待せず呼び込みに頼り、いま神戸に住み、暮らし、生業を営んでいる市民を全く無視する久元市長の政治姿勢が色濃く表れている「構想」です。

非公開・トップダウンで市民や港湾関係者不在

また「同構想」は市民や市会議員が知らない間に、非公開の場で決定されました。久元市長の指示で神戸市港湾審議会の中に「研究会」を設置。市会議員を加えず、行政当局と一部の学者と港湾関係者が非公開で議論し、発表の前日に審議会に報告されました。審議会でも記念式典でも「案」の文字はなく「構想」として出席者に配布しました。
神戸港の将来を考えることは必要ですが、市民や大半の港湾関係者の意見を聞かずに「三十年先を見据えた」計画をトップダウンで押し付けることは許されません。