あったかブログ

2016/06/12 更新

敬老祝い金の存続を(あったか連載)

「神戸市敬老祝い金」の存続を

 

兵庫県社会保障推進協議会神戸市協議会事務局 高山忠徳

神戸市は、二月に敬老祝い金を廃止する方針を発表し、「神戸市民の意見提出手続に関する条例」に基づき、四月二十五日から五月二十日の期間で「神戸市敬老祝い金に関する条例の廃止とこれからの高齢者施策について」の市民意見(パブリック・コメント)を募集しました。

老人福祉法の第二条(基本理念)では、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする」と定められています。

今回廃止しようとする敬老祝い金に関する条例第一条(目的)でも、「この条例は、多年にわたり社会の進展に寄与した老人の長寿を祝し、 敬老祝い金を支給することにより、 老人の福祉の向上を図ることを目的とする」と、いずれも格調高く規定されています。

神戸市は、財政難のたびに、敬老祝い金の制度を改悪してきました(表参照)。「祝い金」制度が次々と縮小されてきたこと自体も容認できませんが、条例そのものを廃止しようとするに至っては驚くばかりです。

深刻化する「老々介護」「単身高齢者」の増加、後期高齢者医療保険料をはじめ、国保料、介護保険料などの負担は増え続け、電気・ガスなどの公共料金をはじめあいつぐ諸物価値上げの一方、わずかな年金は特例水準解消につづき、マクロ経済スライドの導入により大幅に減額されるなど、高齢者をとりまく状況は大変厳しくなっています。

今回の条例廃止はそれに追い打ちをかける冷たい仕打ちです。

戦後日本の復興と今日の発展を支えてきた高齢者の長寿を祝って行われる素晴らしい制度を全廃するのは、上記の理念や目的からも認められません。存続を強く求めます。

またパブリックコメントを募集した「これからの高齢者施策」で実施するという「住民主体でおこなう新たな介護保険総合事業」は、介護保険費用の抑制を目的に、介護保険給付から安上がりの地域支援事業に移行させるものであり、介護サービスの質の低下や、介護職員の処遇の後退が危惧される事業です。

また、条例廃止とそのためのパブリックコメントを実施する手続きにも大いに疑問があります。パブリックコメントは最終決定の前になされるものですが、すでに市長は廃止の方針を表明、そのパブリックコメントの最中に、受給資格者に対して市長から「廃止」の思いを伝える「手紙」をだすなどもってのほかです。

敬老祝い金廃止の条例案は六月十三日から始まる神戸市議会に市長提案がなされるとのことですが、条例案は撤回すべきです。

▼制度:95年度以前の敬老祝い金
対象者と支給額
77歳~87歳:3,000円
88歳以上:5,000円

▽実績:95年度の対象人数と支給総額
77歳~87歳:51,832人 、155,496,000円
88歳以上:7,878 人、39,390,000円
合計59,710人、194,886,000円

▼制度:96年度~03年度の敬老祝い金
対象者と支給額
77歳,88歳,99歳:10,000円
100歳:30,000円

▽実績:03年度の対象人数と支給総額
77歳,88歳,99歳:12,604人、126,040,000円
100歳:192人、5,760,000円
合計12,796人(95年度の21%)、131,800,000円(95年度の68%)

▼制度:04年度以降の敬老祝い金
対象者と支給額
88歳:10,000円
100歳:30,000円

▽実績:14年度の対象人数と支給総額
88歳:6,439人、64,390,000円
100歳:325人、9,750,000円
合計:6,764人(95年度の11%、03年度の53%)、
74,140,000円(95年度の38%、03年度の56%)

▽見込み:15年度の対象人数と支給総額
88歳:6,529人、65,290,000円
100歳:347人、10,410,000円
合計:6,876人(95年度の12%、03年度の54%)、
75,700,000円(95年度の39%、03年度の57%)

(2016年6月12日付「兵庫民報」掲載)