神戸市営住宅の建て替え 民間委託(PFI)推進に問題
6月から開会の神戸市議会に桜の宮市営住宅(2299戸)の建て替えに関する議案が提案されています。
神戸市の提案では、桜の宮市営住宅のうち道路・明石神戸宝塚線の南側640戸の建て替えを民間業者に委託(PFI)し、建て替えに伴う「余剰地」を民間戸建住宅用地として売却しようというものです。
北区にある桜の宮市営住宅は1969年~72年に建設された団地で、老朽化やバリアフリーなどで問題をかかえ、入居者からは建て替え改修については歓迎されています。
しかし、今回の建て替え工事(第1期)は、団地の中で比較的新しく、最寄りの北鈴蘭台駅にちかい18棟だけを対象にしており、2期以降の42棟は対象にされず具体的な建て替え計画も示されていません。
にもかかわらず、第1期工事で640戸を450戸に戸数を減らしたうえ、駅にちかい2.1ヘクタールを上回る土地を「余剰地」として売却してしまうことで、2期以降の入居者からは「なぜ一番古いところから工事に入らないのか」「私たちは、取り残されるのではないか」など不安の声があがり、神戸市議会にも陳情がだされていました。
6月24日の神戸市議会の本会議、26日の都市防災常任委員会で、日本共産党の味口としゆき議員と、西ただす議員はこの問題について当局をただしました。
公営住宅法は「現在戸数の維持」が建て替えの原則。全体計画をしめさず、戸数削減と「余剰地」売却は問題
味口議員は、桜の宮市営受託の建て替えのなかでどのくらいの戸数を建て替えるのか、全体でどのくらいの土地が市営住宅としてのこるのか確定していないにもかかわらず、「余剰地」として民間に売却するのは早計と指摘。公営住宅法では「建て替えは現在の戸数の維持」を「原則」としており、「説明会を開催する等の措置を講ずることにより、当該事業により除却すべき公営住宅の入居者の協力が得られるように努めなければならない」とされていることから、2期以降の入居者にも理解と納得のうえですすめるべきと求めました。
答弁に立った鳥居副市長は「市営住宅の第二次マネジメント計画では、神戸市全体の戸数の縮減を打ち出している」「桜の宮住宅も戸数をいくらにするかは決めていないが、建て替え事業基本方針で街づくりの考え方をしめしており、戸建住宅への売却もその一環」などと答弁しました。
味口議員は、「基本方針のなかでも、”今後、検討を進めていく中で、計画を変更することがあります”と書かれており、全体の計画がきまらなければ、どれくらいの余剰地がうまれるかわからない」と反論しました。
公営住宅のPFI方式は「事業化までに時間がかかる」など問題点があきらか。それでも推進するのは「民間のビジネス機会の創出」が目的
同議員は民間委託(PFI)方式ですすめることについて問題点を指摘。国土交通省のアンケートでは全国の自治体の46%がPFI手法では「事業化までに時間がかかる」という問題点を上げており、また、別の調査でも、「直接建設方式のみで、地域のニーズに応じた公営住宅の建設が実現できている」のでPFI手法をとっていないと自治体の57%が回答していることし示し、PFIの手法では早く建て替え事業を進めてほしいという住民の願い答えれないと追及。
さらに、政府が自治体にPFI推進を進める理由について、国土交通大臣が、経済財政諮問会議で、「民間のビジネス機会の創出」が目的とはっきり述べていることを指摘。今回の桜の宮市営住宅のPFI手法での建て替えと「余剰地」売却は、入居者の願いよりも事業者の利益を優先させるものと厳しく批判しました。
2期以降の入居者も1期建て替え住宅への転居検討を約束-日本共産党議員へ神戸市が答弁
西だだす議員は、1期の建て替え工事で450戸つくることになるが、1期の現在の入居者は404戸であることから、2期以降でも、車いすでの生活など高齢者や障害者から1期へ移転させてほしいという要望があるが、現行の計画ではできるとされていません。同議員は、2期以降の入居者の実態を調査し、可能な限り移転を認めるよう求めました。
長谷川担当局長らは「1期の入居者が優先となるが、2期以降の入居者についても移転できるよう検討したい」と答弁しました。