三宮再開発 地元より財界・国の戦略優先 実現する会が学習会
神戸市の久元喜造市長は「三宮駅周辺においては、駅ビルの再整備計画が次々と鉄道事業者から意思表示があり、国や民間事業者による機運を逃がさず、集中的な施策展開や規制緩和を進める」などと表明。対象地域として、三宮駅周辺にとどまらず、南は43号線より南の沿岸部、西は元町駅まで、総面積97haを都市再生特別措置法にもとづく「緊急整備地域」に申請し、国から指定されました。
説明する味口市議 |
フィールドワーク参加者は「三宮調査隊」の名札をつけて、日本共産党の味口としゆき神戸市議と大前まさひろ中央区市政対策委員長の案内で、「緊急整備地域」内の商業施設や高層マンションを調査。神戸市が進めようとしている計画が、地元商店や市場の実情よりも財界や国の成長戦略を優先する、「三宮巨大再開発」であることが、うきぼりになりました。
「公共施設」設置を名目に規制緩和
ミント神戸 |
はじめに、三宮駅南に神戸新聞会館が整備したシネコンビル「ミント神戸」を見学。1階に、駅前広場の再整備やバス停の配置など「公共施設」を設置したことを理由に、都市再生特別措置法の特例措置が適用され、容積率800%の土地に、倍の1,600%の高層ビルが建設されています(容積率=敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のこと)。
味口議員は、ミント神戸の壁面にある「大型電光掲示板」を指さし、ここに市の案内が掲載されるなどを理由に、「公共施設」を設置と認定されており、今後もこの程度で、どんどん規制緩和される可能性を指摘。参加者からは「表示されているのはほとんど企業の広告で、こんなので規制緩和したら、いくらでも狭い土地に高いビルが林立するのではないか」の感想がだされました。
「財界いいなり」の空中回廊計画
「神戸海港都市づくり研究会」の再開発イメージ図 |
次に、「ミント神戸」から南へ国道2号線を渡る、神戸市が新たに作った陸橋から説明。
神戸商工会議所が神戸経済同友会と神戸青年会議所でつくる「神戸海港都市づくり研究会」(2012年4月設立)は、三宮駅南側にある高架の駅前デッキ広場の全体的をリニューアルし、巨大な空中回廊をつくることを提言しています。
久元市長は、昨年10月の市長選の最中に「神戸未来都市創造プロジェクト」を発表し「(三宮駅)ホームの上空に共同コンコースを整備する」「この共同コンコースからは、南北を望めば海や山を眺望できるようにする」と表明。当選後に、このプロジェクトを推進するためにつくった二つの審議会「都心の未来の姿検討委員会」「三宮構想会議」に、神戸海港都市づくり研究会から財界3団体を委員として参加させています。
味口議員は、このままでは空中回廊づくりにどんどん税金が投入される恐れがあり、これほどあけすけに「財界いいなり」の開発計画はないと批判しました。
六甲アイランドからの移転で経済効果?
参加者は、現在建設中の森本倉庫「三宮ビル北館」を見学。このビルのテナントには、現在六甲アイランドで操業している「P&G本社」が移転することが計画されていますが、神戸市は、これにあわせて、テナント賃料を補助する制度をつくりました。
「5年間で最大4.5億円が補助され、久元市長は『企業誘致競争のなかで、優遇措置した結果、減免額を上回る税収や経済効果をあげる』と主張している」と説明すると、参加者からは「東灘区の会社を、中央区にもってきても、税収や経済効果はかわらない。補助金の出し損だ」「いま六甲アイランドは企業の撤退が問題になっているのに、三宮一極集中させるだけだ」と驚きと怒りの声があがりました。
災害にも不安な超高層ビル乱立のおそれ
54階建てマンション |
「緊急整備地域」内には、地上54階の超高層マンションが建設されていますが、住戸は640戸の計画で、低層部にホテルやスーパー、薬局などが併設されます。
しかし、東京などでは現在、災害時の高層マンションの停電時の救助や水の確保などが問題になっており、南海東南海地震に対しても、三宮周辺の高層ビルの災害対策が課題に浮上しています。
この高層ビルは、神戸市が景観上から高さを規制する「景観計画」を作る前に、駆け込みで建てられています。今後の高層ビル建設についても、「緊急整備地域」の「特例措置」が適用されると「景観計画」の規制が除外され、無秩序な乱開発がすすむことになります。
地域外からはずれた既存の市場・商店街に悪影響も
フィールドワークでは、サンセンタープラザや、駅高架下の店舗や三宮センイ商店街、駅周辺で「緊急整備地域」からはずれている二宮市場など三宮駅周辺の市場や商店街も見学しました。参加者からは「昔あった店がどんどんなくなり、チェーン店がふえてさみしい」「セレクトショップ等色々あって楽しい神戸の良さはつぶさずのこしてほしい」「市場ではシャッターを閉めている店が多い。市場支援抜きに再開発をすすめたら、いま頑張って営業している店に、追い打ちをかけることになるのでは」など感想がだされました。
いま、三宮駅周辺ではJR駅ビルと、阪急駅ビルが再整備の計画が浮上していますが、どちらも高層の商業テナントビルです。日本共産党市議団の提起で実施された市議会特別委員会によるJR西日本と阪急のききとり調査の結果、両社が同時期に再整備するにもかかわらず協議していない実態があきらかになっています。両社がそれぞれの思惑で整備を実施すれば、景観はもとより過剰なテナント整備の競合で、既存の市場や商店街への悪影響は無視できないものになりかねません。
アベノミクスの「成長戦略」に沿う計画
さらに、味口市議は、神戸市の三宮再開発計画が、国の戦略に沿ったものであることを指摘しました。
アベノミクスの「成長戦略」では「都市の競争力の向上を図るため、都市再生や都市防災等における課題を解消し、外国企業やら来訪者をよびこむための環境整備をおこなう」とし、久元市長も、今年3月の議会で「都市間競争になっているときに、まちの魅力をどういうふうに高めていくかということが、外から技術力の高い企業や、あるいはすぐれた人材を呼び込むことは必要なことだ」と答弁しています。
久元市長は、昨年の市長選で安倍内閣の閣僚や幹部などの大々的な応援を受けて当選しましたが、「アベノミクス」の地方での忠実な実行者であることが「三宮再開発計画」からうきぼりになっています。
アベノミクスの「成長戦略」の目的になっているのは、「世界銀行のビジネスランキング」や「都市総合ランキング」で日本や大都市が上位になることや、外国企業の投資を倍増することなど「世界一企業が活動しやすい」国戦略で、地域経済の視点も、中小業者の視点もありません。
日本共産党中央区市政対策委員長
大前まさひろ氏の談話
三宮駅周辺の市場の方の要望を聞く大前まさひろ氏(左) |
三宮駅周辺を「神戸の良さ」を残し活かしつつ、市民や商店街に喜ばれる再整備をすすめるためには、神戸の身の丈・地域の現実から出発すべきです。
わたしも商店のみなさんのお話をうかがってきましたが、再開発をすすめるなら、計画段階でもっと、地元の住民や商店の人たちの参画を保障し、最低でも神戸市として関係地域のすべての商店の「悉皆調査」をすべきです。
神戸市の企業呼び込み型の減税や規制緩和は中止し、地元の中小企業を応援する市政に転換することは、安倍政権の暴走政治を地方からストップの声をかけることになります。わたしも地域のみなさんの声をとどけるため全力でがんばります。